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年末と言えばクリスマス、大掃除、今年の新語。三省堂「今年の新語21017」発表会がもう明日に迫っています。
発表会を控え、皆さんもご存じのながさわ氏が予想記事を発表し、大きな話題になっています(私の中で)。

「今年の新語2017」を予想してみた卍 - 四次元ことばブログ
あす12月3日、辞書出版社の三省堂が主催する「今年の新語2017」のベスト10が発表されます。 「今年の新語」は、私なりにかみくだいて説明すると、「今年、辞書編纂者が...

ランキング予想が語釈つきで行われており、さながら野生の三省堂といった趣です。

人様の記事を勝手にまとめますと、10位から順にイキる、ギガ、クラウドファンディング、キュレーション、ブラック、プレミアムフライデー、ファースト、ワンオペ、もふもふ、そして大賞がバズるという予想。また、忖度は選外。さらに、「トップ10入りしてもおかしくなさそうな他の語」として、下記の語が挙げられています。

アウティング/一択/インフルエンサー/グレージュ/警察〔=間違いを指摘する人〕/コーディガン/スクショ/攻める〔=挑戦する〕/テロンチ/沼〔=はまってしまう趣味〕/バ〔=アルバイト〕/パワーワード/ファクトチェック/フェイクニュース/ヘルプマーク/保活/ポチる/ポリコレ/マウンティング/寄せる〔=対象に合わせる〕/リアタイ/わちゃわちゃ

ユーキャンの「新語・流行語大賞」で年間大賞となったうちのひとつ「忖度」は選外、もうひとつの「インスタ映え」は姿も見せていないという予想。楽しいですね。

人の予想で楽しんでばかりいないで自分はどう思うんだ、という声がそろそろ聞こえそう。私もひとつ、選考委員がどうランキングをつけてくるかの予想をしてみます。去年は割と詳細に予想記事を書き、それなりに的中もしたのですが、今回は準備不足が祟っています。予想順位とごく簡単なコメントを述べるにとどめておきましょう。


10位 ポリコレ

「ポリティカル・コレクトネス」の略です。あんまり語る材料がないので、印象論を述べます。

ここ何年か、「その日ツイッターで自分のタイムラインをよく賑わせた話題」をメモしています。すると、ハラスメントがどうとか、ヘイトがどうとか、ポリコレに関する話は非常に多い。もしかしたらこれは昔からの傾向なのかもしれませんが、しかしツイッターやFacebook、あるいはYahoo!ニュースのコメント欄やYahoo!知恵袋のようなところで意見を言う機会がひとりひとりに与えられた結果、ポリコレの話題が日常化してしまったのではないか、という気はする(一種の「自転車置き場の議論」のようにも思えますけども)。マスに届く発信をするとき、ポリコレを意識しないことは最早あり得ず、それを行わない人が非常にしばしば燃え上がっています。でも、2017年のことばかどうか、ちょっとわからないですね。

はい次。

9位 フライデー

雑誌名ではありません。「プレミアムフライデー」「ブラックフライデー」などの行事(とまでは言えないか)に「フライデー」と付くことがあります。
ご存じ「プレミアムフライデー」は今年から実施され、じわじわ定着しているという話で、これを投稿する人も割といたようです。が、小型国語辞書にまで必要な語彙だろうか、少なくともまだそこまで普及した制度ではないのではないか……と考え、「ブラックフライデー」にも応用の利く「フライデー」単体なら載ってもいいかも知れない、と思いました。まだ小型辞書には載っていません。

うーん、いや、でも、どうだろう。次行きます。

8位 ブラック

2013年の「新語・流行語大賞」トップテンに「ブラック企業」が入っていたのをご記憶の方も多いでしょう。では今更感があるかと言えば、さにあらず。ながさわ氏も述べているように、「ブラック」単体での使用が増え、また「ブラック○○」という形での造語も増えました。「ブラックであること」という概念の部分が「企業(会社)」から独立して、よりはっきりと世間に認知されてきたわけですね。こうなるとあらゆる場面で応用可能ですから、ことばの寿命が長くなる。辞書に載る機運も高まる。

次行きましょう。

7位 ギガ

実は去年の「今年の新語」(わかりにくい)で投稿したので、それを載せておきましょう。

企業が使用している例はながさわ氏も記事で言及していますが、私もこのような広告を採集していました。

実は私自身、最近「ギガ」を好んで(敢えて、と言うべきか)使うようになりました。「通信量がなくなる」より口で言いやすいし伝わるんですよね。「通信速度制限」という恐怖のシステムが存在する限り、そして我々の通信状況が「テラ」レベルにならない限り、「ギガ」は残るように思っています。

どんどん行きます。

6位 パワーワード

2015年から投稿している方がいます。私も2016年に推しました。合わせて掲載します。

2015年に投稿された方は、今年「さすがにそろそろランクインだろう」と呟いています。あまりネットの外では聞かれないため、大賞は無理と踏んでいますが、ランクインしてもいいんじゃないかとは感じます。

下位の予想を終えて上位に入ります。

5位 警察

再び2016年の投稿を再掲。

最近、非常にメジャーな言い回しになってきたように感じます(印象論!)。とは言え「パワーワード」同様、まだネットで使うことばという印象は強いかも(印象論!!)。
ちなみにこれも2015年から投稿があります。

どうも私は人の後追いをしているだけのような気がしてきました。次です。

4位 ヘルプマーク

例によって去年の投稿。

しかし上記の語釈では、健康上の事情から配慮が必要、というポイントが見逃されており、実に不十分です。
その点でながさわ氏が今年投稿した語釈は優れていますね。

「ヘルプマーク」を2017年の「今年の新語」として選ぶ上で重要なのは、JIS規格に追加されたというニュースです。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、(…)JIS Z8210(案内用図記号)の改正案について、日本工業標準調査会(JISC)の審議を経て、本日公示しました。具体的には、7 種類の案内用図記号を変更し、15 種類の新しい案内用図記号及び「ヘルプマーク」を追加しました。

東京都が始めたこのマークは全国区となることが確定的となりました。普及にも弾みがつき、辞書が解説することも求められてくるでしょう。

ベスト3です。早くも息切れしているので手早く。

3位 イキる

「イキリオタク」でもおなじみのイキる。既に載せている辞書があります。

いきる(意気る)[動](「いきがる」の略)えらぶる。調子にのる。鼻を高くする。得意になる。主に関西の若者語。<類義語>意気がる・調子こく・天狗の鼻・ピノキオ。◆「あいつ最近イキッてるわ」「彼氏できたしな」◆「ちょっと跳び箱できたからってイキんなよな」

何だ、もう辞書にあるのか。と言っても普通の国語辞書ではありません。俗語だけを集めた『日本俗語大辞典』という特殊な辞書です。

日本俗語大辞典

編者の米川明彦氏は位相語・社会方言に非常に強く、何冊もの辞書を出しています。ながさわ氏が「米川は」と言うのは『日本俗語大辞典』の語源の記述を指してのこと。

ランクインの暁には、おのずと語源に関する見解も示されるでしょう。そういう意味でも入選を期待したい。

次です。

2位 沼

2014年、「今年からの新語」という飯間先生の個人企画だった頃に投稿していました。

当時はまだネット用語感があったものの、この3年で一気に「普通のことば」に昇格してきました。ながさわ氏は新聞・テレビでの用例を指摘していますが、のみならず趣味領域を扱う雑誌・書籍でも見かけるようになっています。『浪費図鑑』などはある意味その典型と言えましょう(元は同人誌ですが)。様々な趣味にどっぷり浸かる人々の存在がSNSによってますます可視化された時代によく合うことばです。

いよいよ大賞の予想となります。

大賞 草

草wwwwww

失礼しました。大穴っぽいのですが、どうも「草」は無視できない迫力がある。
発言者が笑っていることを示すために文末に「(笑い)」と付ける文化は、出版物では長年当たり前に存在していました。パソコンが登場し、性能が向上する(なかんずく、漢字が扱えるようになる)とともにその表現が画面上に出現したのも当然と言えましょう。いつしか表記は縮められ、「w」にまでなります。その「w」が載った国語辞書が世に放たれたのもほんの数年前、2013年の年末のこと。三省堂国語辞典第7版の記述です。

ダブリュー【W】(名) … ④〔←warai=笑い〕〔俗〕〔インターネットで〕(あざ)笑うことをあらわす文字。「まさかwww」〔二十一世紀になって広まった使い方〕

「藁」「ワロタ」「ワロス」など、生まれては消えていった「笑い」を表すことばが脳裏に浮かびます。けれども「草」の主戦場たるTwitterやLINEは、かつての2ちゃんねるとは比べものにならないほど多くの人が利用しています。「ワロタ」なんて活字で見たら絶対気持ち悪いものの、「草(生える)」ならそこまで奇妙ではありません。「草」もそのうち消えるかもしれませんが、それは意外と先なのではないか、意外と国語辞書に滑り込んでしまうのではないか、という気がします。
まあ大穴なんですけど。

続いてランクインしなかった皆さんのコーナーです。どうぞ。

選外

インスタ映え:たぶん総投稿数の1割くらいがこれで、注目度の高さからも「選外」で説明されることは確定でしょう。結局「インスタ映え」以上の意味は言っておらず、応用がありません。「ブラック」や(私は予想に含めませんでしたが)「ワンオペ」などとの大きな違いです。
忖度:昔からあることばが有名になっただけのようです。「インスタ映え」同様に何らかのコメントがあると予想されます。
:現状、あまり意味のあることばとは思われません。選考委員でも語義が掴めていないんじゃないかと思います。「!」や「★」のように賑やかしとしてしか使われないのであれば、国語辞書に載ることは難しいでしょう。


以上、今年の新語2017の予想をお送りしました。日頃の蓄積不足が端々から顔を覗かせてしまいましたね。せめて、予想が的中することを祈ります。

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