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10月1日、『舟を編む』先行上映会&トークショウに行ってきました。

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会場は両国にあり、入ってみるとキャパシティは見たところ300~400人。
主催するJPICが参加者を募集したときには「200名程度」と書いてありました。

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応募者多数で大きい箱に変えたんでしょうか。それでも抽選に漏れた人がいる模様。
客席を見渡すと8割女性で、若い人が多い感じ。男性は少ない。辞書出版社関係者もちらほらいたようです。

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イベントはたっぷり2時間半。
最初に45分間、アニメの第1話・第2話が上映。休憩の後にトーク、という段取りです。

1部 アニメ先行試写会

特にネタバレするなとか指示はなかったものの、敢えてべらべら喋る必要も感じませんし、今それをやると本放映時に書く話もなくなってしまいます。全体の印象についていくつか。

  • 割と原作に忠実。
    • 映画版はシナリオ進行やキャラ造形がけっこうアレンジされているので。
    • ただし、映画に近い感じのビジュアルもある。
  • 「辞書編纂をネタにした人間ドラマ」にはなっておらず、辞書の話題がかなり濃い。
  • 1話にアニメならではの素晴らしい演出の場面がある。
    • 用例採集を生業とする友人と行ったのですが、やはりこの演出を絶賛していました。辞書マニアでない人の目にはどう映るのか楽しみです。

小ネタとしては、

  • じしょたんずパートがもっと充実していてもいいのでは!?
  • スタッフロールには監修や協力として飯間浩明」「山本康一」「平木靖成」の名前を確認。
    • 山本康一さんは三省堂辞書編集部部長、平木靖成さんは岩波書店辞書編集部の方です(役職があったかは忘れました)。

私は普段アニメをほぼ全く観ませんが、辞書ファンとしてかなり期待できそうです。

2部 トークショウ

登壇者は『舟を編む』原作の三浦しをんさん、原作(単行本)の装画・イラストを担当し、キャラクターデザイン原案でコミカライズも担当する雲田はるこさん、そして司会進行として辞書マニアでもあるサンキュータツオさん。タツオさんの前には主催団体のJPICが用意した辞書と、本人が持参した辞書あわせて十数冊が並べられ、曰く「何の罰ゲームだよ」。

特に後半はタツオさんばかり喋っていましたが、喋るのが仕事の方なのでそれはそうなるでしょうという感じ。話も普通に面白かったです。

以下、記憶にあるやり取りを順不同で適当に書きます。

  • タツオ「アニメ見てどうでしたか」
    しをん「ニヤニヤが止まらなかった! 馬締さんがうなされてるシーン最高(※この話が何度も出てくる)
  • タツオ「新明解国語辞典第4版が出てくる。劇中、本棚の本が気になってしょうがない。馬締は言語学専攻なんだけど、国語学の古典の本とかが多いんだな?とかそんなんで、ストーリーが全然頭に入ってこねえ!」
  • タツオ「玄武書房のエントランスが講談社っぽい、のに出版社の雰囲気は小学館っぽい!」「辞書編集だけをやっている会社ではない……」「大渡海の編集方針は三省堂国語辞典という感じ」
  • しをん「広辞苑の紙は冷たい。三省堂の紙ってあったかい感じがする。不思議」
    タツオ「確かにわかるわー!」
  • しをん「ひと月前に「イケボ」を脳内用例カードに採集しました」
  • しをん「小説、映画、アニメ、漫画と全部解釈が違うので面白い」
    タツオ「辞書みたい」
  • しをん「辞書の魅力は、頼れるけど、隙がある。ツッコミがいもある
  • しをん「辞書の名前を『大渡海』にしたのは馬締に歌わせたかったからですよ」
    タツオ「そういう理由!?!?!?」
    しをん「もちろん」
  • タツオ「明鏡は食べものを引くと、作り方が載っていることが多い。おそばとか。グルメな辞典」

……これ、実際どうなんでしょう? ちょっと調べてみたいところですが。タツオさんは月刊誌『栄養と料理』で『このコトバ、国語辞典に聞いてみよっ』という連載をされているので、その中で引き比べて気付いたということでしょう。
ちなみに、国語辞書をレシピとして見る、という試みには先行例があります。西村まさゆきさんのデイリーポータルZでの記事「国語辞典の語釈をたよりにコロッケをつくる」がそれで、必読です。

和気あいあいと鼎談は進行し、そして終盤……。

  • タツオ「雲田さん林檎の語釈を書くとしたらどうしますか」
    雲田「赤くて、おいしい……」
    タツオ「おいしい! 新明解と気が合いますよ」
    しをん「新明解、大体の食べものに美味って書いてますよね!」
    西練馬「それは新明解国語だけではない!!!(※心の中)」

残念なことに、登壇者の中に拙著『グルメな辞書』を読んだ方がいなかったようです(当たり前だ)。「新明国だけが食べものの項目に「美味」と書く」という通説が誤解であることは、『グルメな辞書』で明らかにしておりますので、興味のある方はお読みいただければと思います。

こんなところでしょうか。雲田さんの発言の抜粋が最後だけになってしまいました。実際、口数は比較的少なかった印象があります。

トークが終わってホワイエに出るとじしょたんずの海くんがいて、みんなにレンズを向けられていました。

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会場を出れば外はすっかり暗く、充実した午後になりました。
あと10日ほどで放送が始まるのを楽しみに待ちたいと思います。

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