#今年の新語2016 大賞の華麗な予想をキメた
【←前編】「今年の新語2016」を華麗に予想したい
きょう12月3日、東京・神保町の明治大学紫紺館にて「三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2016」選考発表会」が開かれました。
「今年の新語」は、国語辞書の編纂者らが「今年特に定着したと思われることば」を選ぶ賞です。
「今年流行りまくった新語」を持て囃すのでもなければ、「今年うまれた新語」を探すのでもありません。「辞書に載せてもいいんじゃないか、載るようになるんじゃないか」と思われたことばにスポットライトを当てる、三省堂らしい(ちょっと地味な)企画です。
発表会に先立ち、私は「今年の新語2016」トップテンを次の順位で予想していました。
- 大賞「ほぼほぼ」
- 2位「まって」
- 3位「エモい」
- 以下、4位「VR」、5位「パワーワード」、6位「AI」、7位「卑怯」、8位「民泊」、9位「スカンツ」、10位「砲」
この予想に至る道筋は、過去の記事「流行語大賞、そして「今年の新語」の条件」と「「今年の新語2016」を華麗に予想したい」をご覧ください。
今回は、予想が当たったかどうかを確かめる「解答編」です。
「今年の新語2016」トップテンは次の通り発表されました。
みごと「今年の新語2016」大賞に輝いたのは「ほぼほぼ」!
そして「今年の新語2016」大賞に予想していたのも「ほぼほぼ」!!!
華麗な予想がキマりました!!!!!
おめでとうございます!!!!!!!
今の賛辞は自分で自分に言いました。
そんなことよりも、2位以下の予想結果を改めて確認します。
私が3位入選と踏んだ「エモい」が2位。
4位予想とした「VR」は7位につけています。
入選するかどうかだけで言えば10分の3を当てました。そして、大賞は順位も含めての大的中です。誰かハワイへご招待してはくれないものでしょうか。
9位と予想した「スカンツ」は入りませんでしたが、類語の「スカーチョ」が6位となっています。私は正直どっちでもいいなこれと迷いながら「スカンツ」を推し、選考委員会の方も割とどっちでもいいんだけど「スカーチョ」にしたみたいな話を発表会で漏らしていましたので、事実上の的中ではないですか。だめですか。
「まって」、「パワーワード」、「AI」、「卑怯」、「民泊」、「砲」は残念ながら入選なりませんでした。
ともあれ、予想結果は悪くない成績だったように思います。今夜は祝杯です。
受賞語の選定理由は三省堂の「今年の新語2016」特設ページに解説が載るとのことですが、まだないので、予想が的中した「ほぼほぼ」について勝手に説明を試みます。公式の見解でも何でもない(下手すると的外れですらあり得る)のであしからず。
「今年の新語」は昨年から三省堂が始めたものですが、その前年の2014年暮れに〈三省堂国語辞典〉編集委員の飯間浩明先生が個人的に開催していたのが「今年からの新語」という同趣旨の企画です。
この「今年からの新語2014」において、「ほぼほぼ」は既に姿を現していました。
「ほぼほぼ」という言葉、最近よく聞く気がする。調べてみると、どうも去年あたりから広まりだしたようだ。「ほぼ」じゃダメなんでしょうか? #今年からの新語
— うだるたわし(地形図) (@Machautumn) November 30, 2014
#今年からの新語 私の周りで蔓延する言葉「ほぼほぼ」大嫌いですから私は使いません!
— なんじゃいも (@nannjyakuimo) December 3, 2014
一部の感度の鋭い人にとっては、おととしの時点で既に「最近「ほぼほぼ」ってよく聞くぞ」と認識されて(そして疎まれて)いたのですね。
続く「今年の新語2015」にも「ほぼほぼ」はエントリー。
【ほぼほぼ】「ほぼ」の強調表現。以前から使われていたようだが、ダウンタウンの番組をきっかけに2014年後半ごろから「気になる」という声がよく聞かれるようになった印象。きっとそのうち「初めて使ったのはダウンタウン」という話になる。 #今年の新語2015
— kyo_tthree (@kyo_tthree) September 8, 2015
こちらのツイートでは「2014年のダウンタウンの番組がきっかけで広まった」旨が指摘されています。これはTBS「水曜日のダウンタウン」の、「売れてる芸人が連れてる後輩芸人、ほぼほぼポンコツ説」および「ネットに転がる芸能人のイイ話、ほぼほぼデマ説」のコーナー(プレゼン)を指すと思われます。
明日の水曜日のダウンタウンは『売れてる芸人が連れてる後輩芸人、ほぼほぼポンコツ説』で、オードリー若林&ビックスモールンゴン、劇団ひとり&神宮寺しし丸、ケンコバ&ネゴシックス、ジュニア&ツーナッカン中本。その他、dj hondaのキャップの説など。
— 藤井健太郎 (@kentaro_fujii) July 22, 2014
世界の怖い夜の間に流れる水曜日のダウンタウンの予告のギャップ差にビックリします。
よる9時からは2時間スペシャル!
「ネットに転がる芸能人のイイ話、ほぼほぼデマ説」では江頭2:50・坂田師匠・ダウンタウン等のイイ話について明らかにします!#水曜日のダウンタウン #tbs— 水曜日のダウンタウン (@wed_downtown) October 29, 2014
番組関係者や公式ツイッターからもコーナー名に「ほぼほぼ」が使われた事実が裏付けられます。ほとんどTogetterの様相を呈してまいりました。
こうして数年をかけ浸透してきた「ほぼほぼ」が2016年の新語として躍り出た決め手は、やはり朝日新聞6月30日付の記事と考えられます。
この2週間後にフジテレビ「めざましテレビ」が「ほぼほぼ」に焦点を当てたのも、朝日の記事の影響力があってこそです。
また、今年8月発売の新書が「ほぼほぼ」をタイトルにしているのも象徴的です。
「ほぼほぼ」と「いまいま」の後ろに「?!」がついていて、更に「おかしな日本語」です。
最近「ほぼほぼ」が気になるなあ、と感じている人が十分に増加していない限り、こんな書名は成立しません。
「ほぼほぼ」自体は、20世紀末から割と使われてきた、という話がきょうの選考発表会でもありました。2016年は「ほぼほぼ」の生まれた年ではない。
しかしながら「ほぼほぼ」が脚光を浴び、良かれ悪しかれ「新語」としての認識が一気に広まったのは、やはり今年なのでしょう。
そういった意味で、2016年は「ほぼほぼ」が広く定着した「ほぼほぼ元年」と言ってよいように思います。
なお、6月の段階で「ほぼほぼ」についてまとめている方がいらっしゃいますので、さらに詳しく知りたい方はこちらのブログへどうぞ。
「今年の新語2016」になぜ入賞したのか、本日の発表会では説明の時間が十分なかったことばもありました。特設ページの更新を心待ちにしましょう。何でも、死ぬほど詳しく解説されるそうです。
言い忘れましたが、三省堂ウェブサイトで月曜に掲載される「今年の新語2016」結果報告には、死ぬほど詳しい選評が載ります。このツイートでも補足的に述べるつもりです。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) December 3, 2016
また、「ほぼほぼ」が来年も、再来年も……と果たしてほんとうに使われ続けていくのか、その点にも末永く注目です。